「エルメスのマルジェラ期」という言葉を聞いて、胸が高鳴らないファッション好きはいないでしょう。
現在、ヴィンテージ市場で異様なまでの高騰を見せているこの時代のアイテム。
エルメスのマルジェラ期とは、メゾン マルタン マルジェラの創業者であるマルタン・マルジェラが1997年から2003年までの6年間、エルメスのレディースプレタポルテを手がけた伝説の期間を指します。
「なぜレディースアイテムなのに、30代の男性たちがこぞって探し求めているのか?」
「現行品と何が違い、どこで見分ければいいのか?」
最近古着に興味を持ち始めた方やラフシモンズなどのデザイナーズアーカイブを愛する方にとって、マルジェラ期のエルメスは避けては通れない「究極の終着点」。
この記事では、シェーヌダンクルなどの名作から真贋を見極めるタグの特徴まで、その魅力を徹底解説していきたいと思います。ぜひ最後までご覧ください!
1. エルメスの「マルジェラ期」とは?
まずこの章では、エルメスのマルジェラ期とはどんなものなのかについて簡単に説明していきたいとおもいます。
1-1.マルタン・マルジェラが描いた「究極のミニマリズム」
1997年、エルメスのプレタポルテ(既製服)部門のアーティスティック・ディレクターに就任したのは、当時「再構築」でモード界を震撼させていたマルタン・マルジェラでした。
誰もが「今までのエルメスの世界観を崩してしまうのでは?」と予想するなか、彼が提示したのは意外にも「シンプルな日常着」。
彼はエルメスの伝統的なクラフトマンシップを尊重し、「最高級の素材を、最も心地よく着るためのデザイン」にすべてを注いだのです。
1-2.1997年〜2003年:マルジェラが残した奇跡の6年間
マルジェラが在籍した1997年から2003年までの6年間は、現在では「奇跡の6年間」と呼ばれています。
パッと見ただけではエルメスと特定できないような匿名性を重視したことは、当時のハイファッション界がロゴブームに沸いていたことに対するアンチテーゼでもありました。
この期間に生まれたアイテムは、流行に左右されないエッセンシャルな魅力を備えており、20年以上の時を経た今でもヴィンテージとして再評価の嵐が巻き起こっています。
1-3.現代の「クワイエット・ラグジュアリー」に通ずる普遍性
昨今のファッショントレンドである「クワイエット・ラグジュアリー(控えめな贅沢)」は、まさにマルジェラが当時提案していた世界観そのもの。
レディースラインでありながらもゆったりとした仕立てが多く、メンズが着てもモダンなシルエットになることや、カシミヤ、ディアスキン、ボックスカーフなど現在では大量生産が不可能なレベルの極上素材が使われています。
ラフシモンズなどのデザイナーズブランドを好む層からはマルジェラがエルメスで残した功績はコレクションすべき「作品」として映ります。
こうした背景から、マルジェラ期のエルメスは単なる古着ではなく、手に入れるべき「文化遺産」としての地位を確立しているのです。
2. 【保存版】マルジェラ期のエルメスが生んだ「一生モノ」の名作4選
マルジェラ期のアイテムは、どれもが「一生モノ」と呼ぶにふさわしい逸品ばかりです。ここでは、特にメンズユーザーからの支持が厚く、中古市場でも「名作」として語り継がれる5つのアイテムを詳しく解説します。
ヴァルーズ:首元の深いVカットが象徴する「着脱の美学」
マルジェラ期の代名詞といえば「ヴァルーズ」です。
胸元まで深く開いたVネックが特徴で「髪型を崩さずに着脱できるように」という女性への細やかな配慮から生まれました。
現代のメンズファッションにおいては、インナーにクルーネックTシャツやタートルネックを差し込むレイヤードスタイルとして非常に重宝されています。ミニマルでありながら一目でわかるシルエットの美しさは唯一無二といえるでしょう。
クロシェット:ネックレスとしても愛される、無駄を削ぎ落とした機能美
元々はバッグ(バーキンなど)の鍵を収納するためのケースを、マルジェラが「首から下げるアクセサリー」として再定義したものです。
エルメスの最高級レザーを最も手軽に、かつミニマルに楽しめるアイテムとして人気。
30代男性のシンプルなスタイリングに程よい高級感とストーリー性を添えてくれます。
アピベルトコート:エルメスの最高級素材とマルジェラの独創性の融合
エルメスのアイコニックなブレスレット「アピ」のベルトデザインを、コートのフロントクロージャーに採用した大胆な一着が「アピベルトコート」。
贅沢なダブルフェイスのカシミヤや上質なウールが使われており、マルジェラらしいオーバーシルエットが特徴。ベルトの留め方次第で表情が変わり、時代を超えて愛用できるコートの完成形と言えます。
ケープコッド:二重巻きストラップ
今やエルメスの時計の定番となっている二重巻きストラップは、実は1998年にマルジェラが提案したものです。
「時計を単なる道具ではなく、ジュエリーとして手首を飾るもの」として再解釈したこのデザインは当時の業界に衝撃を与えました。
時計本体のスクエアケースの知的な印象と、二重巻きストラップのモード感のバランスが、大人の手元を格上げしてくれます。
3. 本物を見極める「タグ」と「刻印」のポイント|マルジェラ期特有の見分け方
高価なアーカイブを手に取る際、最も重要なのは「製造年」と「意匠」の整合性です。エルメスには製造年を特定する独自のルールがあり、それを知ることで確実にマルジェラ期(1997年〜2003年)の個体を判別できます。
3-1. レザーアイテムの製造年刻印:1997年(□A)〜2003年(□G)
エルメスのレザー製品には、製造年を示すアルファベットの刻印(イヤー刻印)が隠されています。マルジェラが在籍した期間を特定する最大の根拠は以下の通りです。
□A(1997年)〜 □G(2003年)
バッグのクロア(ベルト)の裏や、財布・小物の内側に「四角囲みのアルファベット」があるかを確認してください。この範囲外のアルファベットは、前任者や後継者(ジャン=ポール・ゴルチエ)の時代となり、デザインの文脈が異なります。
3-2. 洋服の「6つ穴ボタン」と「H」の綴じ糸
マルジェラ期のプレタポルテを象徴する、最も有名なシグネチャーです。
6つ穴ボタンの意図
通常のボタンは2つ穴か4つ穴ですが、マルジェラはあえて「6つの穴」を空けました。
綴じ糸の形
6つの穴を使い、糸を「H」の形に綴じることで、ロゴに頼らずともエルメスのアイデンティティを表現しています。これはマルタン・マルジェラ本人が考案した、この時代だけの極めて希少なディテールです。
3-3. ジュエリーの「スタンプ刻印」と「ホールマーク」
シェーヌダンクルなどのシルバー製品は、現行品との製造工程の違いが顕著に現れます。
スタンプ(手打ち)刻印
2000年代前半までの個体は、現在のレーザー刻印ではなく、職人が一文字ずつ打ち込む「スタンプ刻印」が主流でした。文字の間隔がわずかに不揃いで、銀が押し出されたような立体感(返り)があるのが特徴です。
ホールマーク(貴金属証明)
フランスの規定に基づき、シルバー925を示す「ミネルヴァの横顔」や「工房印(菱形の枠)」が刻まれています。特にマルジェラ期は、現代よりも刻印が深く、無骨な表情をしている個体が多いのが鑑定上のポイントです。
3-4. タグの仕様:サイズ表記とブランドロゴ
衣類の首元にある布タグにも、この時代特有のルールが存在します。
サイズ表記
通常のフランスサイズ(34、36など)ではなく、「SM(Small)」「ME(Medium)」「LA(Large)」といった2文字のアルファベット表記が採用されているアイテム(特にニット類)は、マルジェラ期の典型的な仕様です。
配色の特徴
ホワイトやベージュのベース地に、ブラウンの刺繍で「HERMÈS-PARIS」と記されたシンプルかつ匿名性の高いデザインが基本となります。
4. 時代を超えて愛されるマルジェラ期のアイテム
いかがだったでしょうか?
今回は、エルメスのマルジェラ期とはなんなのかを解説させていただきました。
エルメスのマルジェラ期は、単なるブランド古着の枠を超え、もはや後世に語り継がれるべき「文化遺産」としての価値を確立しています。
20年以上前のデザインでありながら、現代の「クワイエット・ラグジュアリー」にも見事にフィットし、古臭さを微塵も感じさせないのはマルタン・マルジェラが「普遍的な美しさ」と「着る人の心地よさ」を究極まで突き詰めた結果にほかなりません。
皆様にとっての知識となっていれば幸いです。








